日本経済新聞によれば、眼鏡専門店「パリミキ」「眼鏡の三城」を展開する三城ホールディングスの事業会社、三城(東京・港)は機能性眼鏡「酸素めがね」を2015年11月27日に発売したとのことです。独自開発の「光誘起透明膜」をブリッジやリムなどのフレームにコーティングしたことで、目の回りに酸素や水蒸気が集まり、ドライアイ対策などで目に優しい環境を保てるのが特徴です。
光誘起透明膜は酸化チタンを主成分とする無機系の透明無色の膜。紫外線が当たることにより、電子や正孔(ホール=半導体結晶から電子が抜けてできた穴)を発生させます。このホールと水酸化物イオンが化学反応することで酸素分子と水分子が生じ、酸素と水蒸気が目の周辺に集められる仕組みといいます。公的施設の24時間評価で、酸素量、水蒸気量とも一貫して通常の眼鏡より高い数値を維持しました。光誘起透明膜は光が当たると常磁性を示し、一方で花粉は反磁性であるため、花粉を眼鏡から遠ざける効果もあるといいます。酸化力で有害物質を分解でき、抗菌にも寄与するという触れ込みです。 鼻パッドにはダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを施しました。鼻パッドに触れている部分の温度を拡散することで、女性が気になる鼻パッド部分の化粧崩れを和らげることができるようです。手持ちの眼鏡の加工にも順次応じていく。価格は5500円。販売目標は累計10万本。 「JINS」を展開するジェイアイエヌがパソコン用眼鏡「JINS PC」(現JINSスクリーン)で切り開きました、視力矯正以外の眼鏡需要を創出する「機能性眼鏡」の分野に全く違ったアプローチで切り込みました。JINSスクリーンはブルーライトカットのレンズで訴求するのに対し、レンズではなくフレームへのコーティングで訴求するアイデアです。パソコン用眼鏡はいわゆる格安チェーンを中心に眼鏡各社が追随したが、累計で600万本を超えるJINSの独壇場です。同じ土俵で勝負しないのは極めて賢明といえます。 目の周辺の酸素量・水蒸気量が増加し、花粉カット効果もあり、光の作用で抗菌も期待できる――。いいことずくめの眼鏡のようにもみえるが、一にも二にも重要なのは科学的な証明の「エビデンス」です。通常の眼鏡と比較した実験結果では確かに効果が示されていますが、24時間平均で湿度は「52.4→55.1%」、飽和水蒸気量は「11.3→11.9g/立方メートル」、溶存酸素量は「0.4746→0.4997g/立方メートル」と変化幅は小さいとのこと。果たして本当に目の健康に良いのか、どれだけ良いのかを消費者は知りたいところです。より科学的に、より分かりやすく示していく必要があります。目の専門家として登場するのが、医学博士ではあるものの眼科院長だけというのは物足りません。JINSのように複数の大学教員を巻き込み、産学協同で研究を続け、効果を訴えていく姿勢を参考にすべきとの指摘があるようです。 ただし、会社としての意気込みはうかがえます。商品発表会では84歳の多根裕詞社長が「眼鏡の革命といえる」と強調しました。三城はこれまで度付きの、それも価格が数万円する高めの眼鏡を得意としてきました。創業から60年以上かけて築き上げた老舗眼鏡店としてのブランドもあり、そんな三城が5000円台の新たな機能性眼鏡の拡販に本腰を入れて取り組めば、店舗数は800店以上とJINS(約300店)の3倍近いだけに、インパクトは十分にあるといえます。 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO96020880S6A110C1000000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください。: http://www.j-abc.com/blog/-oxygen-glasses-offer-relief-from-eyestrain-in-japan
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