第3回:オーストラリアで労働者を雇用する(パート1:雇用基準)
オーストラリアの雇用基準は、国の雇用基準(National Employment Standards、通称:NES)が最低基準となり、その他に、労使裁定(modern awards)、労働協約(enterprise agreements)、雇用契約(employment agreements)などが挙げられ、これらは国の雇用基準の最低条件に加えて追加の条件や特別な権利を含んでいます。
オーストラリアの雇用基準をきちんと理解していることで、労働者を雇用(解雇)する際の法的要求事項をきちんと遵守することが出来ます。
ここでは、一般的なオーストラリアの雇用基準について、簡単に説明します。細かい条件等は、以下のフェアワークオンブズマンのウェブサイトをご参照ください。https://www.fairwork.gov.au/employee-entitlements/national-employment-standards
1.国の雇用基準
1) 最大週間労働時間(フルタイム従業員)
1週当たり38時間、プラス合理的な追加労働時間
2) 柔軟な勤務形態の請求
12カ月以上勤続している従業員は、以下の場合、子供の養育をアシストするため、勤務形態の変更(勤務時間、勤務形態、勤務場所:自宅勤務等)を請求することができます。
- 就学前もしくは小学生児童の保護者である場合
- 認定されている病人や障害者の世話を必要とする場合
- 何らかの障害を持つ場合
- 55歳以上である場合
- 家庭内暴力の問題が生じている場合
- 家庭内暴力の為、サポートが必要な家族への、世話や支援を提供している場合
3) 育児関連休暇
12カ月以上勤続している従業員は、育児関連休暇(無給)の期間は最大 12 カ月まで、さらに 12 カ月間の間無休の育児関連休暇の延長を請求することができます。育児関連休暇は、休暇が始まる4週間前までに申請する必要があります。上記のフェアワークオンブズマンのウェブサイトで、育児関連休暇の「チェックリスト」も掲載されていますので、ご利用ください。
有給の育児関連休暇を希望する場合は、会社と相談し、年次休暇や長期勤続休暇等のアレンジを話し合ったり、または要件を満たせば、オーストラリア政府機関であるセンターリンクに申請することも可能です。
4) 年次有給休暇
(臨時従業員を除く)すべての従業員は、年間 20日の年次有給休暇を取得できます。この年次有給休暇は、通常の労働時間に応じて 1年間のうちに漸次発生します。交替勤務の従業員は25日の年次有給休暇を取得することができます。
5) 個人休暇、介護休暇、忌引休暇
(臨時従業員以外の)従業員は、年間 10 日の有給の個人的(傷病)・介護休暇を取得することができます。年間 2 日間の無給の介護休暇も取得することができます。また、従業員は、それぞれの場合において各 2 日間の忌引休暇(臨時従業員は無給、それ以外は有給)を取得できます。
6) 地域活動休暇
従業員は、陪審員としての奉仕または自発的な危機管理活動への奉仕などに参加するために無休の休暇を取得することができます。雇用者は、(臨時従業員以外の)従業員が陪審員として奉仕した場合、最大 10 日間分のその期間中の給与を支払わなければなりません。
7) 長期(永年)勤続休暇
州法、労使裁定、労働協約、雇用契約などで規定内容が異なりますが、長期勤続休暇を取得することが出来ます。
2010年1月1日以前に、ある程度の永年勤続休暇の権利を持っていた従業員への権利は、(以前の)国の永年勤続休暇の統一した発展形として(権利が)存続しています。
退職時に、長期勤続休暇が残っている場合、取得しなかった休暇日数分を賃金に換算し、払い戻すケースが一般的です。
8) 公休日
従業員は、公休日に欠勤し、各日の給与を受け取ることができます。雇用者は、合理的な場合には公休日の勤務を従業員に請求することができます。
9) 解雇予告および余剰人員整理手当
解雇予告は、5週間を上限に、年齢、そして、また勤続年数に応じて決まります。法定の予告(書面で予告しなければなりません)期間は次のとおりです。
1年まで – 1 週間
1年以上、3年まで – 2週間
3年以上、5年まで – 3週間
5年以上 – 4週間
対象となる従業員の年齢が 45歳を超え、最低2年継続して雇用主に対してサービスをした場合には期間が(上記期間に加えて)1週間割増しされます。
余剰人員整理により解雇する場合、雇用者は、勤続年数に応じて4~16週間分の給与に相当する手当を支払います。(ただし、状況によって定められた金額を支払えない雇用者は、Fair Work Commissionに解雇手当の減額を申し入れることができます。) なお、従業員15人未満の小規模企業は、余剰人員整理手当支払いが免除されていますが、2009年7月に新たな小規模企業解雇規範(Small Business Fair Dismissal Code)が導入されています。
10) フェアワーク情報説明書
雇用者は、新たに雇用する従業員に対し、雇用開始後速やかに、フェアワークオンブズマン(ウェブサイトからダウンロード可能)が発行したフェアワーク情報説明書を交付しなければなりません。
2.労使裁定
労使裁定は、特定の業界や職種の最低の雇用資格を定める法律文書です。労使裁定は、国の雇用基準(NES)に追加する形で適用されます。ほぼすべてのオーストラリアの雇用と従業員を、122個の労使裁定がカバーしています。各労使裁定はそれがカバーする業界や職種で働くすべての人に適用されます。ただし、年間$133,000(毎年7月に見直し)以上稼いでいる従業員やマネジャーは、基本的に例外となります。労使裁定は、契約に拘束されている雇用者には適用されません。
雇用主は、すべての従業員に対して、どの労使裁定が、適用されるか確認しなければなりません。
不明な場合は、以下のウェブサイトで確認することが出来ます。http://www.fairwork.gov.au/awards-and-agreements/awards#2299-2301-136-0
雇用主および従業員は、労使裁定、それに関連する移行措置、将来される変更について、常に最新情報に保つ義務があります(例えば、年間の最低賃金)。以下のウェブサイトを参照ください。https://www.fairwork.gov.au/resources/fact-sheets/conditions-of-employment/pages/modern-awards-fact-sheet.aspx#what-do-I-need-to-do-in-the-future
ちなみに、オフィスワークで最も一般的な労使裁定は、”Clerk-Private Sector Award 2010”です。
3.労働協約
雇用主および従業員は、仕事に関連する条件や給与をカバーする労働協約を作成することができます。労働協約は、一般的には職場のニーズに合わせて調整されているため、ビジネスに利益を提供することができます。雇用契約は、該当する労働協約(企業の契約)によって下支えされています。雇用契約は、追加の権利を提供するかもしれないが、労働協約で定められている権利については、内容について削除したり減らすことはできません。
4.雇用契約
雇用契約は書面または口頭であっても構いません。ただし雇用契約の内容につきましては、きちんと書面(契約書など)で、従業員の業務の契約条件を記録することをお勧めします。
雇用契約は、国の雇用基準や、適用される労使裁定、労働協約よりも良い条件を、(従業員に)提供することができます。例えば、業績に応じたボーナス、車の提供などです。しかし国の雇用基準で定められている従業員の最低限の権利を削減することはできません。
--ご注意-
私どもは質の高いビジネス・アドバイザリーサービスの提供をモットーとしております。
この情報は、公共的にアクセスできる情報をベースにして経営管理の視点から提供するものです。法的アドバイスを構成するものではありません。この情報に依拠して法的意味のある何らかの行動を起こされる場合には、前もってお客様の特定の状況に応じた法的アドバイスを専門家からお受けください。
-Disclaimer-
We are committed to delivering quality in business advisory services.
This information is provided on the business advisory perspective only, with reference to the materials publically available. It does not constitute legal advice and should not be relied upon as such. Specific legal advice about your specific circumstances should always be sought separately before taking any action based on this information.
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オーストラリアの雇用基準をきちんと理解していることで、労働者を雇用(解雇)する際の法的要求事項をきちんと遵守することが出来ます。
ここでは、一般的なオーストラリアの雇用基準について、簡単に説明します。細かい条件等は、以下のフェアワークオンブズマンのウェブサイトをご参照ください。https://www.fairwork.gov.au/employee-entitlements/national-employment-standards
1.国の雇用基準
1) 最大週間労働時間(フルタイム従業員)
1週当たり38時間、プラス合理的な追加労働時間
2) 柔軟な勤務形態の請求
12カ月以上勤続している従業員は、以下の場合、子供の養育をアシストするため、勤務形態の変更(勤務時間、勤務形態、勤務場所:自宅勤務等)を請求することができます。
- 就学前もしくは小学生児童の保護者である場合
- 認定されている病人や障害者の世話を必要とする場合
- 何らかの障害を持つ場合
- 55歳以上である場合
- 家庭内暴力の問題が生じている場合
- 家庭内暴力の為、サポートが必要な家族への、世話や支援を提供している場合
3) 育児関連休暇
12カ月以上勤続している従業員は、育児関連休暇(無給)の期間は最大 12 カ月まで、さらに 12 カ月間の間無休の育児関連休暇の延長を請求することができます。育児関連休暇は、休暇が始まる4週間前までに申請する必要があります。上記のフェアワークオンブズマンのウェブサイトで、育児関連休暇の「チェックリスト」も掲載されていますので、ご利用ください。
有給の育児関連休暇を希望する場合は、会社と相談し、年次休暇や長期勤続休暇等のアレンジを話し合ったり、または要件を満たせば、オーストラリア政府機関であるセンターリンクに申請することも可能です。
4) 年次有給休暇
(臨時従業員を除く)すべての従業員は、年間 20日の年次有給休暇を取得できます。この年次有給休暇は、通常の労働時間に応じて 1年間のうちに漸次発生します。交替勤務の従業員は25日の年次有給休暇を取得することができます。
5) 個人休暇、介護休暇、忌引休暇
(臨時従業員以外の)従業員は、年間 10 日の有給の個人的(傷病)・介護休暇を取得することができます。年間 2 日間の無給の介護休暇も取得することができます。また、従業員は、それぞれの場合において各 2 日間の忌引休暇(臨時従業員は無給、それ以外は有給)を取得できます。
6) 地域活動休暇
従業員は、陪審員としての奉仕または自発的な危機管理活動への奉仕などに参加するために無休の休暇を取得することができます。雇用者は、(臨時従業員以外の)従業員が陪審員として奉仕した場合、最大 10 日間分のその期間中の給与を支払わなければなりません。
7) 長期(永年)勤続休暇
州法、労使裁定、労働協約、雇用契約などで規定内容が異なりますが、長期勤続休暇を取得することが出来ます。
2010年1月1日以前に、ある程度の永年勤続休暇の権利を持っていた従業員への権利は、(以前の)国の永年勤続休暇の統一した発展形として(権利が)存続しています。
退職時に、長期勤続休暇が残っている場合、取得しなかった休暇日数分を賃金に換算し、払い戻すケースが一般的です。
8) 公休日
従業員は、公休日に欠勤し、各日の給与を受け取ることができます。雇用者は、合理的な場合には公休日の勤務を従業員に請求することができます。
9) 解雇予告および余剰人員整理手当
解雇予告は、5週間を上限に、年齢、そして、また勤続年数に応じて決まります。法定の予告(書面で予告しなければなりません)期間は次のとおりです。
1年まで – 1 週間
1年以上、3年まで – 2週間
3年以上、5年まで – 3週間
5年以上 – 4週間
対象となる従業員の年齢が 45歳を超え、最低2年継続して雇用主に対してサービスをした場合には期間が(上記期間に加えて)1週間割増しされます。
余剰人員整理により解雇する場合、雇用者は、勤続年数に応じて4~16週間分の給与に相当する手当を支払います。(ただし、状況によって定められた金額を支払えない雇用者は、Fair Work Commissionに解雇手当の減額を申し入れることができます。) なお、従業員15人未満の小規模企業は、余剰人員整理手当支払いが免除されていますが、2009年7月に新たな小規模企業解雇規範(Small Business Fair Dismissal Code)が導入されています。
10) フェアワーク情報説明書
雇用者は、新たに雇用する従業員に対し、雇用開始後速やかに、フェアワークオンブズマン(ウェブサイトからダウンロード可能)が発行したフェアワーク情報説明書を交付しなければなりません。
2.労使裁定
労使裁定は、特定の業界や職種の最低の雇用資格を定める法律文書です。労使裁定は、国の雇用基準(NES)に追加する形で適用されます。ほぼすべてのオーストラリアの雇用と従業員を、122個の労使裁定がカバーしています。各労使裁定はそれがカバーする業界や職種で働くすべての人に適用されます。ただし、年間$133,000(毎年7月に見直し)以上稼いでいる従業員やマネジャーは、基本的に例外となります。労使裁定は、契約に拘束されている雇用者には適用されません。
雇用主は、すべての従業員に対して、どの労使裁定が、適用されるか確認しなければなりません。
不明な場合は、以下のウェブサイトで確認することが出来ます。http://www.fairwork.gov.au/awards-and-agreements/awards#2299-2301-136-0
雇用主および従業員は、労使裁定、それに関連する移行措置、将来される変更について、常に最新情報に保つ義務があります(例えば、年間の最低賃金)。以下のウェブサイトを参照ください。https://www.fairwork.gov.au/resources/fact-sheets/conditions-of-employment/pages/modern-awards-fact-sheet.aspx#what-do-I-need-to-do-in-the-future
ちなみに、オフィスワークで最も一般的な労使裁定は、”Clerk-Private Sector Award 2010”です。
3.労働協約
雇用主および従業員は、仕事に関連する条件や給与をカバーする労働協約を作成することができます。労働協約は、一般的には職場のニーズに合わせて調整されているため、ビジネスに利益を提供することができます。雇用契約は、該当する労働協約(企業の契約)によって下支えされています。雇用契約は、追加の権利を提供するかもしれないが、労働協約で定められている権利については、内容について削除したり減らすことはできません。
4.雇用契約
雇用契約は書面または口頭であっても構いません。ただし雇用契約の内容につきましては、きちんと書面(契約書など)で、従業員の業務の契約条件を記録することをお勧めします。
雇用契約は、国の雇用基準や、適用される労使裁定、労働協約よりも良い条件を、(従業員に)提供することができます。例えば、業績に応じたボーナス、車の提供などです。しかし国の雇用基準で定められている従業員の最低限の権利を削減することはできません。
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この情報は、公共的にアクセスできる情報をベースにして経営管理の視点から提供するものです。法的アドバイスを構成するものではありません。この情報に依拠して法的意味のある何らかの行動を起こされる場合には、前もってお客様の特定の状況に応じた法的アドバイスを専門家からお受けください。
-Disclaimer-
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