日本経済新聞によれば、YKKは片手でも装着可能なファスナーを開発したようです。磁石でファスナーの駆動部を装着できるため、開け閉めする前に金具を組み合わせる手順を不要にしました。1分1秒を争うスポーツ選手のほか、高齢者や障害者向けの衣類の需要を見込んでいます。
これまでのファスナーの閉め方の常識は、駆動部を両手でかみ合わせ、チャックを閉めるという手順だった。YKKが開発した新商品「マグネットファスナー」は、一方の駆動部をもう1つの駆動部に近づけると、双方の駆動部に埋め込んだ磁石が反応。片手でも駆動部を簡単にかみ合わせられ、そのままチャックを閉められる。 磁石は1センチメートルほどの距離で反応し、慣れればファスナーを見ずにチャックを閉められる。競技に集中したいスポーツ選手に加え、手や目が不自由な高齢者が使用する衣類への活用を見込んでいる。このほか、寒い季節に手がかじかんだり、買い物中などで片手が使えなかったりする状態でもファスナーを閉められるようになる。 開発のきっかけは2015年、体が不自由な高齢者などから既存のファスナーが使いづらいという意見をもらったことだった。 そこでYKKはファスナー使用前に必要だった、駆動部をもう1つの駆動部に差し込む作業が不要なファスナーを開発。双方の駆動部をボタンのように重ね合わせるだけで装着が完了し、そのままチャックが閉められるファスナー「クリック トラック」を開発した。 このファスナーをより便利な商品に進化させたのが新たに開発したマグネットファスナーだ。YKKのファスニング事業本部商品戦略室の嶋野雄介氏は「簡単に操作したいという要望があった。もっと便利にできないかと考えてマグネットという結論に至った」と話す。 これまでもYKKの社内には、磁石で簡単に装着から開け閉めできるファスナーの開発案はあった。樹脂に比べて重い磁石を使うことによる利便性の悪化やデザイン性などが課題で、実用化には至っていなかった。 軽量化は強力な磁力を持つ磁石を採用すれば実現したが、周囲の金属と反応してしまうかが懸念材料だった。YKKは一般消費者に対するモニタリングを実施し、円柱に加工した磁石の脱着が簡単であることを突き止めた。 しかし、強い磁力を持つネオジム磁石を使っているため、円柱状の上下からは強い磁力が発生する。そのため、自宅の鍵や金属製の小物などに反応する可能性があった。そこで円柱状の磁石の上下に、磁力を通しづらくする物質を板状に加工して設置した。ネオジムは永久磁石の主原料であるため、衣類を洗濯しても磁力が弱まる可能性は低いという。 YKKはファスナーに付加価値を加える商品開発に力を入れてきた。ファスナーは首に引っかかる可能性もあり、強い力が加わるなど緊急時には外れるファスナーも開発した。 このタイプは子供の衣類に活用されており、滑り台の金具に衣類が引っかかると、ファスナーの金具が外れて首が絞まるのを防ぐという仕組みだ。 YKKは1年間に100億本規模のファスナーを出荷している。特定の限られる用途のファスナーは特注品として納品しているが、ほとんどのファスナーは通常の衣類などに使われる汎用品だ。 YKKの稼ぎ頭である特注品のファスナーで、どれだけ付加価値の高い商品を生み出せるかにも技術力が現れる。同社は定期的にこうした付加価値の高い新商品を発売している。 新たに開発したマグネットファスナーは20年度内に試験販売を始める。主なターゲットはアパレル会社だ。ファスニング事業本部の米島久嗣執行役員は「スポーツ選手向けがメインで、スポーツは全般が対象となる。スポーツ向けが(出荷先の)9割ほどで、残りが高齢者や障害者向けになるのではないか」と話す。 ファスナーを簡単に使えるようになれば、これまでファスナー付きの洋服を敬遠してきた消費者の選択肢も広げることにもつながる。YKKの新商品はこれまで両手で操作することが当たり前とされていたファスナーのあり方を変えるものだ。同社は新たな市場を切り開く商品開発を目指し、今後もまい進し続けていく。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58609790Y0A420C2XY0000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/magnetic-zipper-latest-innovation-from-japans-ykk.html
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