日本経済新聞によれば、NTTが2030年度までに自前の発送電網を整備し、再生可能エネルギー事業に本格参入するようです。日本の再生エネルギー発電容量の1割にあたる750万キロワットの発電力を確保し、独自の発送電網も使って顧客に直販します。脱炭素の流れが強まるなか、資本力がある再生エネルギー事業者が生まれることで国内電力の競争環境が一変します。
16年の電力自由化以来、発送電網を全国で展開できる事業者の参入は初めてだ。NTTは今の発電容量を25倍に増強する。25年まで年間1000億円程度を投資する。30年度までの累計は1兆円を超える可能性がある。容量は四国電力1社分を上回り、19年に6135万キロワットあった日本の再生エネ発電容量(大型水力を除く)の12%を占める規模となる。 エネルギー事業を統括するNTTアノードエナジー(東京・千代田)が中核となり発電事業を拡大する。全国約7300の電話局の大半を「ミニ発電所」と見立て再エネの受け皿となる蓄電池を配備するほか、巨大な太陽光発電、洋上風力発電の設備も整える。 加えて大手電力とは別系統の電力送配の仕組みを整備する。全国の電話局から近隣の工場やオフィスビルに大手の電力網だけでなく自前の配電網も使って電力を供給する。近く三菱商事と提携し、国内1万4千を超えるローソン店舗などへの電力供給を検討する。 既存の送配電網は、大手電力が大型火力や原子力発電の電力を優先的に送る権利をおさえている。この結果、再生エネによる電力は、東日本だけで送電線の容量の5~8割分が実質的に使えないとされ事実上の参入障壁となっていた。NTTは独自のインフラでこの問題を解決する。 NTTグループの電力使用量は日本全体の約1%になる。NTTは使用する電力に占める再生エネの比率を現在の4.5%から30年度には3割以上に引き上げる。 ESG(環境・社会・企業統治)投資の広がりを受け、国内企業の再生エネ活用熱も高まっている。伊藤忠商事は今年から東京の本社ビルで使用する全ての電気を再生エネ由来に切り替えた。企業や病院、学校などへの再生エネの外販が進むと見ている。 送配電網を持つことで利用者の電力データが手に入る利点もある。通信データとかけあわせることで、新たなビジネスを生むきっかけにもなる。 通信ビジネスの成長鈍化に直面するNTTにとって再生エネ事業は次の主力事業の一つだ。同社の現在の再生エネ発電容量は30万キロワット。700万キロワット超の再生エネ開発目標は、電力最大手の東京電力ホールディングスが30年代前半までの国内再生エネの開発規模として掲げる200万~300万キロワットを大きく上回る。 課題は投資の効率化だ。洋上風力の場合、一般的に10万キロワットの発電設備の建設コストは1000億円程度に上る。仮に750万キロワットの4割を洋上風力で賄う場合、単純計算で3兆円規模の投資が必要となる。NTTは「新技術の導入や提携先との共同出資案件を増やしていく」(幹部)としている。 NTTが750万キロワットの再生エネを実現すれば、政府が掲げる30年の再生エネ比率22~24%の目標達成が現実味を帯びる。英BPが石油主体の収益構造の見直しを決めるなど、世界ではエネルギー大手が相次ぎ脱炭素にかじを切っている。資金力と技術を持ったNTTの電力本格参入は、電気料金の引き下げにもつながる。既存の電力大手の市場支配を切り崩すきっかけになりそうだ。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60923240Z20C20A6MM8000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/ntt-to-join-japans-renewable-energy-sector-with-us9bn-investment.html?lang=ja
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