自動車の燃費改善につながる転がり抵抗の低減や、操縦安全性などタイヤを巡る環境規制は強化されています。欧州連合(EU)では環境基準に満たない製品の販売を2016年から禁じました。中国でも類似の規制が19年から義務化されます。
EVシフトも追い風です。車は重量が重くなると燃費も悪くなります。ガソリン車に比べ、EVは電池や電装品を多く搭載するため車体重量が重くなり、タイヤにも素材の改良が求められています。日本の化学大手は燃費低減と操縦性能を両立させた高機能の合成ゴム「溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(S―SBR)」の第5世代(5G)を市場に相次ぎ投入します。
S―SBRで世界首位の旭化成は燃費を10%以上改善しながら、剛性や強度など耐摩耗性能を維持した新製品を開発。まずEVシフトが他の地域に比べ急ピッチで進むとみられる欧州で、独コンチネンタルなどのタイヤメーカーに18年から販売します。分子構造などに工夫をこらしました。
年産24万トンの生産能力を持つシンガポールと日本の工場はフル稼働で、このほどシンガポール工場の生産能力を3割増強することを決めました。販売量を20年までに16年比15%増やすようです。
JSRも17年中にS―SBRの5G製品の量産に乗り出します。ゴムのなかに分散させてタイヤを補強するシリカという材料の配合を工夫することで転がり抵抗を低減。燃費改善と操縦しやすさを高め、ブリヂストンなどに販売します。
JSRは需要増を受けてタイ工場のラインを増設しているほか、18年以降にハンガリーの新工場も稼働させます。同年の生産能力を16年比2倍にする計画で、20年3月期までに年率10%の売り上げ増を見込んでいます。
世界の乗用車・軽トラック用タイヤの販売本数は25年に22億1千万本と15年比38%増える見通しです。世界のS―SBRの需要量も25年に175万トンと同2倍になると予測されており、化学各社は5G対応を進めます。
タイヤ各社は環境規制対応と並行して、操縦安定性などの向上も求めています。日本の化学大手は開発資源の選択と集中が課題となります。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO20313480T20C17A8TJ1000/
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https://www.j-abc.com/blog/japan-chemical-makers-putting-next-gen-rubber-to-road