日本経済新聞によれば、自動車向けヘッドランプ大手、スタンレー電気が光の応用技術を生かした「殺菌」事業に取り組んでいます。これまで投資家の関心は薄かったのですが、新型コロナウイルスの感染が広がり、市場では公衆衛生に関わる企業の再評価が始まったようです。「コロナ後」の社会の変化を見据えて投資マネーの動きが変わるかもしれません。
スタンレーが用いるのは紫外線だ。波長の短い紫外線を照射するとDNAの二重らせん構造が破壊され、水や空気中の菌が細胞分裂による増殖機能を失って死滅する。薬品を使わずに殺菌ができるので、装置の手入れがしやすく自然環境への影響も少ないとされる。2月には、国際協力機構(JICA)がSDGs(持続可能な開発目標)につなげる事業として、インドで飲料水の消毒プロジェクトを同社に委託した。下痢による子供の死亡や、ペットボトルごみの削減につながるという。 紫外線を使う殺菌は、以前は医薬品や精密機械の製造に用いる大型装置が主流だったが、スタンレーは、より寿命が長い小型の蛍光管を用いた製品を2010年に実用化した。浄水器や加湿器などに使われ、家電大手の空気清浄機にも採用されている。直近では水殺菌向けで売上高は20億円ほどとみられる。19年11月には米国で水殺菌用発光ダイオード(LED)部材メーカーを約40億円で買収すると発表した。LEDの出力をこれまでの4倍に高められる可能性があるとみて、浄水場などに売り込む。 スタンレーは営業利益の6割を自動車向けが占める。殺菌事業は、部門別業績では液晶パネル用バックライトなど「コンポーネンツ」に含まれる。これまで株式市場から大きく注目はされていなかった。同社で「殺菌事業を25年3月期に売上高で500億円、営業利益で100億円の事業を目指す」(飯野勝利取締役)。これまで紫外線を使う水殺菌は水銀ランプが主流だったが、LED技術を生かすことで殺菌能力の強い波長を高い出力で出せるといい高い採算を狙っている。連結営業利益は19年3月期に539億円だったので、極めて意欲的だ。 直近では年初からの株価下落率は37%安。自動車メーカーが相次ぎ生産を休止しているため、日経平均(21%安)よりも評価が厳しい。21年3月期は当初、ホンダなどの新車に採用され部品の供給が広がるとの期待が強かっただけに、反動もあるようだ。 ただ新型コロナの感染が世界に広がり、投資家の価値観は変わりつつある。ESG(環境・社会・企業統治)を重視してきた投資マネーが、医療に関わる企業にも資金を回している。マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは「衛生に対して意識が低かった国でも、今後は強く意識されるようになる」と指摘。モルガン・スタンレーMUFG証券の垣内真司アナリストはリポートでスタンレーについて「水殺菌用LEDにも注目できる」と指摘した。 殺菌装置をめぐっては、電解水など様々な新技術が互いに用途を広げようとしのぎを削っている。ひとつひとつの実績の積み上げていけば、新しい視点の投資家を振り向かせることにつながるかもしれない。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57658560T00C20A4000000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/germ-killing-uv-lamps-from-japanese-headlight-maker-gain-attention.html
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