日本経済新聞によれば、東京海洋大学は、植物や無脊椎動物など魚以外の生物から作る次世代の養殖向けエサの開発に挑んでいるようです。東京海洋大学の研究チームは、このほど魚が大きく育つのに必要な脂肪酸を無脊椎動物で作れることを突き止めました。抽出してマダイやブリのエサとして使えるか試すとのことです。養殖魚のエサの原料となる小魚の消費を抑えられれば、漁業資源量の低下に一石を投じる可能性もあります。
「ブリ1匹を1キログラム大きく育てるのに、少なくとも4キログラムの魚の魚粉の原料が必要だ」と東京海洋大の佐藤秀一教授は話す。飼料には、魚粉や魚油といった魚由来のたんぱく質や脂質が必要とされてきた。日ごろ私たちが口にしている肉食魚の多くは、魚由来のエサしか口にしないのだという。なかでもマグロやブリなど食物連鎖の上位に位置する魚であればあるほど、その嗜好が強い。 ところが1990年代には、養殖向けのエサの定番であるマイワシの漁獲量が激減。養殖業用の飼料の供給が危ぶまれ、魚以外の原料で魚の栄養を補う研究が本格化した。淡水魚は、魚粉を含まないエサでもアミノ酸を補えば食べることが分かったが、ブリやマダイなどの海水魚の多くはあまり食べず、成長しにくい問題があった。 佐藤教授らは、海水魚向けに魚粉を使わないエサを開発した。海水魚の代謝経路を調べると特定の酵素の一種が働かず、必須アミノ酸のメチオニンをタウリンに代謝できないことが従来の研究から分かった。大豆由来のたんぱく質で作った飼料に合成タウリンでこの酵素を補うと、ブリやマダイの成長が改善した。 もうひとつの課題が成長に欠かせない必須脂肪酸だ。大半の海水魚は、必須脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)を自分の体内で生成できない。脊椎動物は進化の過程で、DHA合成に関与している酵素を作る遺伝子「fads1」を失った。リノレン酸からEPAを経てDHAに合成する過程のなかでも特に「Δ(デルタ)5不飽和化」という合成を経ることができない。青魚を中心に魚といえばDHAが豊富と思いがちだが、実は食物連鎖の上位の魚は、下位の魚を食べながらDHAを体内に濃縮しているにすぎない。 そこで佐藤教授や壁谷尚樹助教らは、DHAを魚以外から確保する方法を検討。無脊椎動物の代謝経路を詳しく解析し、多毛類のゴカイなどで、DHAの合成につながる酵素を持つ可能性を突き止めた。甲殻類のヨコエビも合成の条件を満たしている可能性があるという。 今年度採択の科学技術振興機構の未来社会創造事業で、約3年かけて実用化に向けた基礎技術の確立を目指す。DHAをよく作る代謝機能をもつゴカイやヨコエビの種を特定、効率よく飼育できる方法を検討する。共同研究を進める東京大学では遺伝子レベルでの解析を進める。順調に進めばその後5年ほどかけて実証実験し、無脊椎動物から養殖魚用のDHAを確保できるか確かめる計画だ。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53562950Z11C19A2X90000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/japanese-scientists-develop-plant-based-food-to-conserve-marine-stock.html
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