日本経済新聞によれば、日本の鉄鋼メーカーが価格の安い低品位の原料の利用拡大に乗り出すようです。昨年後半に供給不安の高まった高品位の原料炭や鉄スクラップの価格が急騰する一方、低品位の原料の上げ幅は限られています。各社は新たな設備や技術を活用し、低品位原料の使用増で原料コストの抑制を図ります。高炉では海外勢とのシェア争いが続く中、低品位炭の活用が競争力の源泉ともなります。
「鋼材製品で1トンあたり1500円を超えるコスト削減につなげる」。大阪市の中堅電炉、中山鋼業の井手迫利文社長は、2018年に導入するスクラップ予熱装置「エコアークライト」に期待を込めています。主原料である鉄スクラップをあらかじめ熱する装置を電炉に設置し、消費する電力量を減らせるようです。 価格の安い低級スクラップの利用にもつなげます。現在は鉄を多く含む高級品の比率が全体の6割を占めますが、「今後は低級スクラップの比率と逆転したい」(井手迫社長)。予熱装置でスクラップを1千度以上で熱し、溶かす過程で低級品に含まれる鉛など不純物を除くことができるということです。 高炉が昨年秋から急騰した原料炭の代替として高品位スクラップの購入を増やし、市中価格は2年ぶりの高値となる1トン3万円近くまで上昇しました。原油の底入れによる電気料金の値上げと合わせ、電炉の生産コストは膨らんでいます。電炉各社の視線は価格の急上昇した高品位スクラップに比べ割安感の強い低級品に向かうようです。 三興製鋼(神奈川県平塚市)が着目するのは、廃自動車から発生する低品位スクラップ(自動車プレス材)です。スクラップ業者10社と契約を結び、自動車プレス材の消費量を全体の5%前後まで高めました。プレス材はプラスチックやガラスなど不純物を含むため高品位スクラップに比べ、買値は1トンあたり1万円ほど安いとのことです。 不純物による低い歩留まりを考慮しても、3千~4千円ほどのコスト削減につながるといいます。鈴木史郎社長は「新しいスクラップを積極的に使って技術力を蓄積し、競争力につなげる」と語っています。 高炉の原料である原料炭でも、品位ごとの値差は過去最大の水準まで拡大しています。高品位炭(強粘結炭)の産地はオーストラリアなどに限られ、中国の減産をきっかけに供給不安が一気に高まりました。日本の長期契約価格では品位の値差は16年半ばまで10~20ドルでしたが、17年1~3月期に100ドル超に跳ね上がりました。 日本の高炉はこれまで技術開発に取り組み、低品位炭の活用を増やしてきました。新日鉄住金の大分製鉄所や名古屋製鉄所の一部コークス炉では原料炭を急速に加熱し強度を高める技術により、低品位炭の使用比率を5割まで引き上げています。 「高品位炭への依存度の高い中国やインドの製鉄所に比べ、日本の高炉はコスト面で優位」(大手証券アナリスト)との指摘も多いのが現状です。品位ごとの値差が縮小するには時間がかかるとみられ、各社の原料戦略が一段と問われそうです。 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12372420R30C17A1QM8000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: http://www.j-abc.com/blog/-japanese-steelmakers-switching-to-lower-grade-raw-materials
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