日本経済新聞によれば、生育環境を制御して野菜を作る「植物工場」が新型コロナウイルス禍で脚光を浴びているようです。袋詰め販売される点が衛生的だと消費者が支持。割高だった販売価格が生産効率化で下がってきたのも追い風です。農業の後継者難と気候変動にも対応した食料の安定調達手段として存在感が高まっています。
スーパーという異業種から7年前に参入した木田屋商店(千葉県浦安市)は福井県と静岡県に3工場を構える。レタスを中心に1日の生産能力は計3万4千株。外食店からの注文は減ったものの、生鮮食材販売のオイシックス・ラ・大地を通じたネット販売は4~5月に前年の倍となり、スーパー向けは2割増えた。 工場産のレタスは農薬を使わず、1袋80グラム程度で単身でも食べきれるといった特徴から人気が高まる。新型コロナを機に「個別包装で衛生的な点も支持され始めた」(木田屋商店)。 同社のレタスの店頭価格は80グラムあたり128円程度から。工場野菜としては最も安い部類に入る。農地で作る露地栽培のレタスはスーパーで20~110円程度(80グラム換算)のためまだ割高だが、品質と生産量が安定しているため引き合いが増えている。 日本は世界でも植物工場の数が多い。日本施設園芸協会(東京・中央)によれば2月時点で386カ所ある。設備が過剰で実験的な小規模施設が多く、4割は赤字だ。販路開拓などの甘さから撤退も相次いだ。 それでも最近は「収益化の光明が見え始めた」(日本総合研究所の三輪泰史氏)。水道光熱費や人件費などを圧縮する技術や、栽培の知見がたまり大規模化も進むためだ。木田屋商店は溶液入り栽培パネルを段状に配置しても育つ光の強さを突き止め、生産性が向上。混載車両で物流費も抑え黒字を実現した。省電力の発光ダイオード(LED)照明も安くなった。 青果流通会社の傘下で、イトーヨーカドーなどに供給するスプレッド(京都市)は2018年、2つ目のレタス工場を京都府木津川市で稼働させた。日産3万株と世界最大級で、高さ10メートルの棚への搬送など工程の7割を自動にした。リーフレタス(80~100グラム)の希望小売価格は税別158円と、08年と比べて4割安くなった。NTTグループと提携してデータを収集。人工知能(AI)で効率化し、さらなる低価格化に挑む。 こうした動きが新規参入を誘発する。スプレッドは運営ノウハウを提供するフランチャイズチェーン(FC)方式を展開。石油元売りのENEOSグループが20年末に完成させる植物工場の建設などを支援している。 簡素な施設で裾野を広げるのがプランツラボラトリー(東京・港)だ。東京大学と共同で、安価な農業用ビニールを用いた植物工場システムを開発した。導入費は従来の3分の1程度という。西友の一部店舗に小型工場を設けたほか、JR東日本グループとも連携し高架下でも栽培に取り組む。 参入が相次ぐ背景には食料の調達懸念がある。 食料自給率が4割未満の日本で19年の農業就業人口は5年前より35%減り、平均年齢は67歳になった。コロナ禍では中国産野菜の輸入が一時滞った。外国人技能実習生が来日できず収穫に支障を来す農家も相次ぐ。不安定化する気象に左右されず、限られた人手と空間で収量と価格が安定する植物工場が注目された。 工場野菜の需要はスーパーだけでなく業務用で伸びしろが大きい。コンビニエンスストアや外食店のサラダ、共働きの拡大で需要が伸びる総菜向けカット野菜などだ。雑菌が少なく日持ちし洗う手間が省けるほか、大きさもそろい相性がいい。 富士経済(東京・中央)によると、年55万トンのレタス需要に対し植物工場の出荷量は19年に約1万7千トンとシェアは3%程度。30年ごろには6万2千トンと10%超に達する見通しだ。 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60948200Z20C20A6TJ2000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/factory-grown-veggies-comfort-japans-germophobic-shoppers-due-to-covid-19.html
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