朝日新聞によれば、日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)で、サトウキビに迫る勢いで生産が伸びている作物があります。それは長命草(ちょうめいそう)です。セリ科の野草で、かつては栽培する島民もいませんでしたが、高い栄養価に注目した化粧品大手の資生堂が健康食品の原料に採用。化粧品への応用も決まり、離島を支える特産品に育ちつつあるようです。
資生堂が専門店ブランドの化粧品「ベネフィーク」から9月に売り出す美容液「ハイドロジーニアス」。長命草を原料に使った同社初の化粧品で、参考小売価格は1万円(税別)です。 東京都内で先月24日に開かれた発表会で担当者が新商品をPRしました。「長命草エキスは肌を保湿し、潤いを与える効果があります」。 東京から約2千キロ離れた与那国島。晴れた日には、西端から約110キロ先の台湾の島影が望めます。突き抜けるような青い空と強烈な日差しのもと、高さ約50センチ、大きな三つ葉のような形の長命草が畑に広がっています。 「潮風と紫外線から身を守るために豊富な栄養価を蓄えています」と与那国薬草園代表の杉本和信さん。長命草栽培の中心人物です。 2000年代の青汁ブームをきっかけに栽培を始めた。「産業が少ないから若者が島に戻らない。長命草で産業を作り出そうと考えた。まさか資生堂の化粧品にまでなるとは驚きだね」 02年に本格栽培を始めた当時、周囲の目は冷ややかだったとのことです。神事で用いるほか、あえ物などで食べられてはいたが、人が育てる作物ではなく、売ろうと思う島民もいませんでした。知り合いの農家に栽培を頼んでも、けんもほろろだったようです。 転機は4年後に訪れました。長命草のうわさを聞きつけた資生堂の社員が島を訪ねてきたのです。「資生堂ならではの青汁を作るために当時、一般的な大麦若葉ではなく特別な原料を探していました。名前からしていいですよね」と長命草事業を担当する前田利子さん。 ポリフェノールやカルシウム、ビタミン、鉄分などが豊富なことも分かり、資生堂として初めて農家との直接取引に乗り出しました。 健康食品の開発を重ね、果汁を加えたドリンクと、サプリメントのように手軽にとれるタブレットを08年に全国発売。直後に2度の台風で畑が壊滅的な被害を受け、販売停止に追い込まれましたが、「一緒に復活させましょう」。畑仕事の経験が少ない社員約50人が駆けつけ、苗植えを手伝いました。 長命草は沖縄県内や九州南部で自生しますが、「海に囲まれ、日差しの強い与那国島の長命草は葉が厚く、品質が高い」と資生堂の担当者。化粧品の原料にも用途を広げました。 自生の長命草が海岸の崖で育つことから、杉本さんは海水を与える独自の栽培法を確立。04年に9軒だった生産者は60軒に増え、生産額はこの10年で20倍に伸びました。島の酒造所は長命草を使った焼酎を発売しました。 雇用も生まれました。農家から集めた長命草を洗浄する工場では10人前後が働いています。その一人、杉本茂之さんは「同級生で島に残るのは21人中4人だけ。この工場がなければ、僕も島を出ていたと思う」。長命草は人口約1700人、サトウキビ栽培が主産業の島を支える新たな柱になりつつあります。 サトウキビは収穫に大型の機械が必要で、農薬散布など手間もかかります。高齢化や後継者不足で近年は生産量が低迷していますが、長命草は農薬いらずで育てやすく、鎌一つで収穫できる特徴があります。 6年前から生産する崎原正吉さんは「1度植えれば年3、4回は収穫でき、500万円ほどの収入になる。サトウキビを減らして長命草の栽培を増やしたい」。与那国町の外間守吉町長は「長命草がここまで成長するとは誰も予想できなかった。サトウキビとの複合経営を広げたい」と話しています。 http://digital.asahi.com/articles/ASJ6Q7T5TJ6QULFA03S.html この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: http://www.j-abc.com/blog/-healthy-industry-blooms-on-isle-in-okinawa-japan-with-long-life-plant
0 Comments
Leave a Reply. |
ニュースレター
配信登録 著者木名瀬 晴彦 アーカイブ
January 2021
カテゴリー
All
|
Getting Around
|