日本経済新聞によれば、今年もピークを迎えつつある花粉症の治療にがん治療などで使われる先端技術を応用する動きが広がってきました。鳥居薬品が免疫療法薬を2018年に投入したのに続き、スイスのノバルティスは抗体医薬技術を応用した世界初の治療薬を19年秋にも国内で販売します。気候変動の影響で欧米では患者数がさらに拡大するとみられ、新たな成長市場となっています。
花粉症はスギやヒノキなど植物の花粉が原因となって起きるアレルギー症状で、国内の患者数は全国で2000万人程度とされる。アレルギー症状を引き起こす体内物質「ヒスタミン」を抑える薬で症状を緩和する方法が一般的だが、効果には限度がありくしゃみや鼻水で苦しむ人は多い。 しかし、医療技術の進化で発症自体を抑えられる可能性が出てきた。スイス製薬大手のノバルティスは、難治疾患に使われる「抗体医薬」の技術を世界で初めて花粉症治療に応用した。がん免疫薬「オプジーボ」に代表されるように、がん治療や関節リウマチのような難治性の免疫疾患に使われる技術で、アレルギー症状を引き起こす免疫反応を阻害する仕組みだ。 国内での臨床試験(治験)では抗ヒスタミン薬などの従来薬に追加することで、鼻や目の症状を大幅に改善する効果を確認。花粉症向けでは世界初となる抗体医薬の承認申請を厚生労働省に提出した。早ければ19年秋にも重症患者向け治療薬として使えるようになる。 中堅製薬の鳥居薬品は、花粉症の成分に体を慣れさせて免疫の暴走を抑える薬を開発。18年6月に錠剤で子どもも使用できる新薬「シダキュア」の販売を始めた。3~5年程度服用し続ければ、服用をやめても症状が長期間出なくなるとされる。シダキュアは半年で4億円以上を売り上げ、19年12月期は前期比6.8倍の27億円を見込む。 世界的に花粉症の患者数は増えている。日本では1996年から2014年までに病院を訪れた患者数が5割増えた。欧州でも1986年以降、ブタクサの花粉の飛散が大幅に拡大している。花粉症向けの国内の医薬品市場は2000億円以上とされる。インドの調査会社マーケット・リサーチ・フューチャーは花粉症などのアレルギー性鼻炎の世界市場は150億ドル(約1兆6600億円)以上で、患者数増加に伴い拡大すると予想する。 研究開発が特に活発なのが現在300近くの治験が進んでいる米国だ。ワシントン大学などが米科学誌に発表した論文では、花粉症の原因となるブタクサの生育範囲が気温と降水量の変化により50年代までに全米で大幅に拡大すると予想する。 仏製薬大手サノフィは抗体医薬「デュピルマブ」を使い草花粉による季節性アレルギー性鼻炎の治療に向けた治験を進めるほか、鳥居薬品のシダキュアの仕組みを進化させた「皮下注射」タイプの免疫療法を手がけるオランダのHALアレルギーグループなどが花粉症治療薬の開発を進めている。欧州でもブタクサの花粉症患者が現在の3400万人から7700万人まで増加すると推計する論文もある。 ただアレルギー反応には未解明な部分も多く、新薬開発は一筋縄ではいかない。アステラス製薬は今年に入って花粉症ワクチンの開発を断念した。各国で薬価引き下げ圧力が高まるなか、製薬各社は花粉症などアレルギー分野でどれだけリスクをとるかも問われる。 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42419990T10C19A3TJ2000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/drugmakers-tap-cutting-edge-tech-to-fight-pollen-allergies-in-japan
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