最近の日本経済新聞によれば、東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランド(OLC)が先月下旬に公表した新たな開発計画が話題を集めているようです。園内の混雑対策やサービスの質向上などソフト面の改善にも焦点を当てたからです。これまで開発といえば、新しいアトラクションの導入などハード面に重点が置かれることが多かった経緯があります。同社の姿勢の変化の裏には「このままでは飽きられてしまう」との危機感がにじんでいるという見方も出ています。
新計画では、TDLのアトラクション「グランドサーキット・レースウェイ」を17年1月に閉鎖して「美女と野獣」などの建設に取りかかります。グランドサーキットは開業当初からある古い施設。横田明宜取締役常務執行役員は「集客へのマイナス影響はほとんどないと考える」と話しています。 新計画で市場の懸念には対応した形ですが、OLCには違う狙いもあるようです。それは混雑対策で、TDSで「アナ雪」に先駆けて「ソアリン」というアトラクションの導入を決めたことにも表れています。 「ソアリン」は米国で人気の屋内型施設。一度に何人もの利用者を乗せることができるのが特徴です。屋内に多くの来場客を収容できれば、それだけ通路など他のエリアの混雑が解消します。TDLに新設する「美女と野獣」も、レストランなどを併設することで現在の「グランドサーキット」より収容人数が増える見込みです。「これまでに比べ稼働人数が上がり、混雑の緩和につながる」(OLC幹部)ことを狙っています。 混雑を不満として挙げるTDRの利用者は多いようです。16年3月期の入園者数は前の期に比べ4%減ったとはいえ、3019万人と3年連続で3000万人を超えました。人気の高いシーズンには入場制限をかける日も増えています。入園者数に対する収容面積不足は明白で、上西京一郎社長は市場関係者向け説明会で「社内調査では、利用客の満足度は落ちていない」と強調しながら「混雑日が増えており、満足度が低下しているという外部調査があるのも認識している」と話しました。 TDRの生命線ともいえるサービス強化を、あえて開発計画の具体策に盛り込んだことも、これまでのOLCにはなかった変化です。従業員に対して新たなリーダーシップ教育を導入するなど教育制度を拡充するほか、契約社員を正社員に切り替えるなどの施策を講じます。17年3月期の人件費は前期に比べ約35億円増える見込みです。 混んでいてもリピーターがTDRを訪れる理由は質の高いサービスにあります。TDRを頻繁に訪れるという兵庫県西宮市の会社員、植田理恵さんは「従業員の教育が行き届いている。年に2~3回訪れるが、楽しい思い出しかない」と話しています。相次ぐ値上げでTDRの入園料(フリーパス)は7400円と、5年前より2割高くなりました。SMBC日興証券の前田栄二シニアアナリストは「入園者の満足度を高められなければ将来の成長はない。同社が顧客満足度を課題と認識したのは前向きな変化」と評価しています。 アナリストからの高評価とは対照的に、株価は新開発計画を発表した4月27日の水準を一度も上回っていないのが現状です。市場全体の下げにつられた面があるとはいえ、市場はハードからソフトへの変化をまだ消化しきれていないようです。ソフト面の改善は、アトラクション建設のような分かりやすい変化を伴わないのが特徴で、OLCは来園者数や業績などで早期に結果を出す必要があるかもしれないとのことです。 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO02392230W6A510C1000000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: http://www.j-abc.com/blog/-tokyo-disney-resort-enhancing-soft-power-to-retain-customers
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