日本経済新聞によれば、時価総額日本1位と2位であるトヨタ自動車とソフトバンクグループが次世代の移動サービスで提携しました。企業文化の違いなどを乗り越え、具体的な相乗効果を広げていけるかが試されます。
車は人工知能(AI)や高速通信で大量のデータとつながり、自動運転や共用(シェア)などの革命が起きつつあります。世界販売1000万台で首位を競うトヨタでさえ、「主役」で居続けられる保証はありません。移動サービスへの転換を迫られる中、異業種のソフトバンクの経営資源を活用するとともに刺激を受け、自己変革を促します。 「本当かと2回思った」。記者会見で、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は今夏の裏話を明らかにしました。トヨタから提携を打診され、豊田章男社長が自ら東京に会いに来るというのです。4月ごろから両社の若手で練ってきた協業策は、8月と9月のトップ会談でまとまりました。 両氏の縁は約20年前にさかのぼります。トヨタの販売店の業務改善を進める課長時代の豊田氏に、孫氏は車のインターネット販売システムを提案しました。豊田氏は同様に車の画像を使ったネット商談システムを広げようとしており、断りました。孫氏は「悪い感じではなかったが、がっくりした」と振り返ります。20年が過ぎ、提携を巡る立場は一変しました。 車をめぐる変革を受け、トヨタは1月に移動サービス全般を手掛ける「モビリティカンパニー」に変わると宣言しました。6月には東南アジアの配車サービス最大手、グラブへの10億ドルの出資を決め、米ウーバーテクノロジーズにも8月に5億ドルの出資を決めました。 しかし、トヨタが提携するウーバー、グラブ、中国の滴滴出行に加え、インドのオラの筆頭株主はすべてソフトバンクグループです。このライドシェア大手4社の18年の運賃収入は10兆円規模に膨らみます。孫氏は消費者の巨大なデータを吸い上げる存在になるとみています。滴滴出行やオラなどトヨタのシェアが低い地域のサービス事業者にとって、「トヨタは協業相手として優先順位が高くなく、ただの一事業者でしかない」(トヨタ幹部)ということです。 乗り物のサービス化を意味する「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」市場は30年までに欧米中で1兆5000億ドルに成長するとの予測もあります。種まきから事業化への移行を本格化する時、必ずトヨタの目線の先にいるソフトバンクと競合するか、協業するかの決断に迫られました。 首脳同士が面談する前の5月、愛知県豊田市で開かれたトヨタ労使の意見交換会。ある役員はソフトバンクを念頭に置き、抜本的な意識改革が必要と訴えました。「ライドシェア業界各社の筆頭株主になり、世界最大の公共交通機関と明言する通信会社がある」「これまでと全く異なる競合が出現し、のみ込まれかねない時代になっている」 テクノロジー企業の移動サービスへの取り組みの早さはトヨタにとって脅威です。完全自動運転技術の開発をリードするグーグル系のウェイモは年内にも、米国で自動運転車を使った交通サービスを始めます。中国では百度(バイドゥ)が「アポロ計画」と呼ぶ自動運転開発の100社を超える世界連合を動かしています。 トヨタも移動や宅配、小売りなどに使える完全自動運転車「イー・パレット」を20年代半ばに実用化する計画です。ただトヨタと提携したあるベンチャー首脳は「新しい提案をしても、課題の洗い出しが多く、結論がなかなか出ない」との不満を漏らします。トヨタ社内からは「安全性、信頼性、公平性は譲れず、従来のルールを破ることに不安がある」との声もあります。世界1000万台の生産、販売の既存事業を抱えつつ、移動サービスに転換という両面作戦を迫られる難しさがあります。 豊田氏は社内で「事業を転換しないと生き残れない瀬戸際。トヨタは過去の成功体験が大きく、このままだと5年、10年後に会社がなくなる」と繰り返します。ソフトバンクとの提携は「異業種からの強烈な刺激を社内に与える狙いもある」(トヨタ役員)ということです。 トヨタはこの2年でダイハツ工業の完全子会社化、スズキとの包括提携、マツダとの資本提携と、従来の自動車事業の強化で提携を広げてきました。いずれも仕事のやり方を抜本的に見直すため、外からの視点を入れる狙いです。ソフトバンクとの提携は新領域を本格的に攻めることも意味します。 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36211630V01C18A0EA6000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/toyota-looks-to-softbanks-son-as-a-catalyst-for-innovation
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