日本経済新聞によれば、「圧倒的な低価格」――。大手スーパーの西友は3月下旬、オーストラリア産米「うららか」を店頭に並べて安値を強調しました。4キロ袋で1180円(税抜き)とキロ単価は北海道産「ななつぼし」より2割も安い。同社が豪州産米を扱うのは5年ぶり。関東を中心に144店で販売攻勢をかけます。
コメ輸入を厳格に管理してきた日本で、外国産米の存在感が高まりつつあります。2017年度の政府入札では主食向けの輸入枠10万トンが5年ぶりに上限に達しました。低価格を武器に、外食店に加えてスーパーでも扱う店が増えています。国産米の高騰を好機に、海外勢は開国とばかりに市場開放を迫る構えです。 コメを農政の聖域としてきた日本では、ほぼ国産で賄ってきました。ただ、17年まで約50年続いた減反と、飼料用米に生産をシフトさせる政策が影響。国産米の供給はここ5年だけで11%減の年間730万トンとなり、取引価格は3年連続で上昇しました。足元の小売価格は前年比で1割ほど高く、コメ離れにつながりました。 西友は「もっと安い価格帯の商品が必要」と、住友商事とコメ卸のヤマタネと交渉。「もはや国産でキロ300円以下の銘柄はなく、要望に合うのは豪州産だった」(ヤマタネの山崎元裕社長)。農用地面積は日本の約90倍の4億5千万ヘクタールあり、価格競争力は高い。17年秋から政府の輸入米入札を利用し、横浜港には続々とコンテナ船で豪州産米が届きました。 海外勢は日本のコメ市場を開くチャンスとみています。豪州大使館は4月上旬に流通業者を集めました。リチャード・コート駐日大使は「1906年、日本人農家の高須賀穣さんがビクトリア州で農地を借りたのが豪州産米の始まり」と説明。コシヒカリ系統である由来も紹介し食味の近さも訴えました。 3月には米国を除く11カ国が、環太平洋経済連携協定(TPP)に合意しました。発効後、最終的に豪州は日本向けで年間8400トンのコメ輸出枠が生まれます。日本政府は「国内需給が緩まないよう政府備蓄米を増やす」としていますが、基本は国産米を買い入れる方針。増える豪州産米は市場に流れる見通しです。 当てが外れたのは米国のコメ生産者です。本来はTPPで日本向けに7万トンのコメ輸出枠を得られるはずでした。オバマ政権下の16年、米通商代表部(USTR)の報告書では「米国が穀物市場で得られる恩恵は主に日本からもたらされる」と示していました。17年に誕生したトランプ政権はTPPを離脱しました。新たな交渉の行方は不透明です。 ちょうど四半世紀前、1993年のウルグアイ・ラウンド交渉で日本はコメの義務的な輸入量(ミニマムアクセス)を受け入れました。貿易自由化を拒否した代償として、合意内容に含まれました。現在は年間77万トンのコメ輸入枠があり、主食用は最大10万トン、残りは米菓のような加工用や飼料用に使います。 全体のコメ消費からみると1%強の量でも、輸入米需要は国産米の高騰によって拡大。17年度の主食用は5年ぶりに輸入枠の上限に達しました。うち米国産が6割、豪州産は3割を占めます。他にタイ産米なども輸入します。 米国産米は約1年前から吉野家が牛丼向けに使い、中華の幸楽苑や「神戸元町ドリア」のサンマルクグループも採用。優位を保とうとUSAライス連合会(バージニア州)はすしチェーン店にも営業をかけます。 「日本はブランド米ばかり作っている場合ではない」(木徳神糧の平山惇社長)。近年は5キロ袋で3千円台の高級米も複数出てきましたが、同2千円以下のコメを求める家庭も多く購買層は限られます。国内の実質賃金は17年に2年ぶりの前年比減となり消費者は必需品の価格に敏感になりやすいのです。 高値に拍車をかけたのは飼料用米への生産誘導で、収穫量が主食用米の1割近くにまで拡大しました。国産米は高値の主食用米と家畜向けとの二極化が進みます。外国産米が輸出枠の拡大を働きかけつつ、空白の安値ゾーンに食い込むのか。国産米は生き残りをかけ、輸出を視野に入れたコスト対策が不可欠です。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29747040T20C18A4EA1000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/japans-price-conscious-consumers-turn-to-australian-rice
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