農業法人のD&Tファーム(岡山市)は専用の農業ハウスでバナナを栽培します。2017年3月に販売を始め、18年に500トンの出荷を見込んでいます。今後は生産の委託先を増やし、10万トンの出荷を目指します。
バナナは輸入量約100万トンのうち8割以上がフィリピン産です。同社の田中節三取締役が苗の細胞を一時的に凍結し、寒さへの耐性を高めて植える独自技術を開発。岡山での栽培が可能になりました。
輸入農産物は輸送中に害虫やカビが発生し品質が低下するのを防ぐため、収穫後に農薬を散布することが多い。こうした農薬が健康を損ねるとの指摘も出ていました。
国産バナナは岡山県内の百貨店で1本650円程度で販売しています。「皮まで食べても安心な点やおいしさが評価されている」(D&Tファーム)。一房150円前後の一般の輸入品に比べ割高だが、売れ行きは好調ということです。
焼き菓子などのOEM(相手先ブランドによる生産)を手掛ける平塚製菓(埼玉県草加市)は、小笠原諸島の母島(東京都小笠原村)でカカオ豆の栽培に10年から取り組んでいます。現地の農家、折田農園と連携し50アールの土地にカカオ豆の木500本を屋内で育てています。
木の成長は順調ということです。19年秋には収穫したカカオ豆を使った自社ブランドの板チョコを商品化する計画です。
カカオ豆は西アフリカや東南アジア、中南米など赤道を挟んだ南北緯20度以内の地域で栽培されます。日本の輸入量は約5万トンで7~8割をガーナ産が占めています。「生産から商品化まで自社で行い、安全を担保する」(平塚製菓)ということです。
産地が限られる作物の価格急騰リスクの緩和も期待できます。菓子メーカーの石屋製菓(札幌市)は、香料などに使うバニラ豆の生産を北海道で取り組んでいます。19年秋ごろには100キロ程度を初めて収穫できる見通しです。
寒冷地向け農業ハウスの設計や技術提供を行うホッコウ(同)と提携。農業ハウスで熱帯地方の温度や湿度を再現し、17年10月から道内の農場で栽培を始めました。
バニラ豆はマダガスカルが主産地で輸入品の9割超が同国からです。現地の台風被害や欧州の需要拡大で、輸入価格はこの6年で約20倍になりました。「地産地消のほか、原料価格の極端な変動を抑える」(石屋製菓)狙いがあります。
大量生産には原産国に比べ高い栽培コストの引き下げが課題です。石屋製菓は北海道に多い地熱資源をいかし、化石燃料などに比べ安価な熱源の確保を進める計画です。
キウイフルーツのように国産化が進み、海外産と時期をずらして店頭に並ぶ青果物もあります。安心・安全への意識の高まりを背景に国産品の認知度が高まれば、農家の新たな商機になりそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31368900V00C18A6000000/
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https://www.j-abc.com/blog/farmers-in-japan-warm-to-tropical-produce