日本経済新聞によれば、国産牛の生産が難しくなりつつあるようです。子牛の仕入れ値が高騰し、食肉用に育てる農家の経営を圧迫。牛肉の取引価格は「バブル」とも呼ばれるほど高いのですが、下落に転じれば生産コストを賄えなくなるとのことです。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効が米大統領選の影響で遅れたとしても、すでに国産牛生産はピンチのようです。
7月12日。千葉家畜市場(千葉市)は子牛を売買する家畜商たちの熱気で満ちていました。広島や徳島からも農家や家畜商が訪れます。会場には子牛が次々と運び込まれ、壁際の大きな液晶画面に目はくぎ付けになります。牛の生年月日や出生地と共に、スタート時の価格が出ます。参加者は手元のスイッチを押しセリに加わります。どんどん価格が上がっていき、手を離せば棄権となります。最後の一人になれば落札です。 セリの主役は、乳牛と和牛をかけ合わせた交雑種の子牛。和牛よりやや安く、スーパーでよく見る「国産牛」の多くはこの種類です。今回は最高で51万円がつき、5年前に比べ8割も上昇しました。 「高ければいいわけでもない」。千葉家畜市場を運営する千葉県家畜商協同組合の蜂谷良一理事長は警鐘を鳴らしています。牛の成長がいまひとつでも高値が付くと、価格と実態が合わなくなります。例えば牛の膝に少しゆがみがあると、数百キロに成長する体を支えづらくなります。落札しなかった参加者からは「全国の市場で本来の質を超えた価格も付くようになった」との声も漏れました。 子牛だと最も安い生後60日以内の「ヌレ子」が40万円台の最高値を付けました。「相場の天井を突き破った」。千葉県で1千頭の肉牛を育てる石上信幸さんはため息をついています。もはや採算ギリギリの水準ですが、大規模化した農業法人が買うということです。従業員の多い経営だとキャッシュを稼ぐために仕入れざるを得ないのようです。 実は食肉となる国産牛の多くを支えるのは乳牛を生産する酪農家です。雌のホルスタインに和牛の精子を人工授精し、交雑種の子牛を産ませています。価格が硬直的な牛乳より、肉牛も売った方がもうかります。和牛と乳牛の交配率は本州以南だと51%に達しました。いま乳牛が産む子牛の過半数は肉牛です。結果として乳牛は減るので、先行きは徐々に交雑牛も減ります。 和牛の高騰も影響しています。国内で飼う黒毛和牛は159万頭と、直近ピークの2010年に比べ14%少ないのが現状です。繁殖農家は70歳代も多く、後継者不足で離農が続いてしまいます。和牛の子牛は全国平均で7月に1頭79万円。ピーク時よりやや下がったとはいえ5年前の2倍強です。子牛を買う肥育農家には打撃となります。 佐賀牛を育てる原田畜産(佐賀市)の原田洋平さんも不安げです。農場で牛を指さし「子牛のとき70万円で買ったが、2年成長させて出荷するときの市況は不透明」と語りました。全国指標の東京市場では最高級の和牛の枝肉卸値が1キロ2800円台で頭打ちになってきました。畜産を持続可能にするには、根本の子牛不足に対処する必要があるようです。 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO06233390Y6A810C1QM8000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: http://www.j-abc.com/blog/-wagyu-beef-under-threat-in-japan
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