日本経済新聞によれば、日本の食料の生産基盤を脅かす不安材料に、農業の働き手を確保する難しさがあります。産業界で働き方改革が課題になる中、農業はきちんと休みを取りにくい仕事とみられてきたことが原因の一つです。レンコンやコメを栽培する農業法人のOne(金沢市)はこの難題に挑み、2019年から週休2日を実現しました。職場を変えたカギは、トヨタ自動車の指導による「カイゼン」活動でした。
Oneの田畑の総面積は50ヘクタール弱と、日本の平均を大きく上回る大規模経営だ。レンコンやコメに加え、ジャガイモやニンニクを作っている。従業員の福利厚生の仕組みを整えるため、13年に法人化。さらに仕事を効率化し休みをとるために、16年にはトヨタの農業支援システム「豊作計画」を導入した。 豊作計画のサービスには2つの柱がある。1つは作業の進捗状況を田んぼや畑ごとにスマートフォンで入力し、クラウドで管理するシステム。もう1つが、カイゼン指導だ。トヨタのスタッフが農場を訪ね、無駄で非効率な作業を洗い出す。この2つがかみ合うことで、漠然とやっていた仕事を効率的なものに改めることが可能になる。現在、90の農場がこのシステムを導入している。 Oneの豊作計画は、じつに素朴なやり取りから始まった。トヨタのスタッフが「どうやって作業していますか」と尋ねると、副代表の宮野義隆さんは答えた――「流れで」。「やりにくくありませんか」と問われ、作業を細かく点検することからカイゼン活動がスタートした。 最初にやったのが、作業場の整理整頓。床に乱雑に置いていた農機具や工具を、棚にラベルを貼って片付けた。レンコンを置く台車の下に車輪を付け、床に矢印を書いて手軽に確実に作業を進められるようにした。 個々の作業の改善が進むと、対象はより経営の中心へと及んだ。とくに効果が大きかったのが、受注方法の見直しだ。以前はレンコンの収穫予定が300キロの日の午後に、追加で50キロの注文が入ると、現場に「350キロにしてくれ」と頼んで混乱を生んだりしていた。トヨタの指導を受け、取引先に「2日前に注文してください」と伝えるなどして、作業現場にしわ寄せが行かないよう改めた。 この延長で力を発揮したのが、詳細なデータ管理だ。レンコンの需要は、忘年会など人が集まる機会が多く、正月を間近に控える12月に集中する。その時期に1日に収穫できる分を超える量を受注し、注文に応えられないといったことが起きていた。そこで前年のデータをもとに需要を予測し、前倒しで収穫する方法に改めた。そのためにレンコンを保存できる大型の冷蔵庫も導入した。 休みを増やせるようになったのは、こうした改善を積み重ねた結果だ。豊作計画を活用しながら、毎週確実に休めるように作業のスケジュールを組み替え、19年になってついに週休2日を実現した。1日の労働時間もほぼ8時間以内に収めることができるようになった。宮野さんは残業が当たり前だったころをふり返り、「何が原因で残業しているのかさえわかっていなかった」と笑う。 プロセスで重要だったのは、「休みを増やす」から「時給を増やす」に目標を切り替えたことだ。労働時間の短縮と事業の拡大を両立させ、会社の収益を増やすことを目指した。そうした中で宮野さんたちは、トヨタのスタッフに指摘されなくても、自分で課題を見つけ出す楽しさを知った。カイゼン活動の醍醐味と言っていいだろう。 日本の農業は高齢農家の大量リタイアによる担い手不足に直面している。農業は「家族の無償の労働に支えられている」と言われるように、家業だったころは働くルールが曖昧でも続けられた。だが農業人口の減少をカバーするには、経営規模を大きくし、人材を集めて従業員を雇用することが必要だ。農場を「ホワイトな職場」にできなければ、日本の食料の基盤が危うくなる。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47719300U9A720C1000000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/toyotas-efficiency-improvements-boost-agricultures-rep-among-younger-workers
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