日本経済新聞によれば、日本の製薬各社が難病でもある希少疾患向けの開発を加速するようです。患者数が少なく企業が及び腰になる分野でしたが、デジタル化の進展や政府の支援を背景に収益化が視野に入ったようです。富士フイルムや武田薬品工業などは国内外で事業化を加速し、欧米大手に対抗できる収益源を育てます。効果的な薬が乏しかった希少疾患の治療法拡充が期待されるほか、患者数が多い他の難病への応用など技術・産業基盤の強化につながる可能性もあります。
希少疾患は患者数が極めて少ない難病で、世界に7千近い種類がある。がんや生活習慣病など患者数が多い分野に比べ収益性が低く、ファイザーなど欧米の製薬大手はほとんど手がけていない。人工知能(AI)やデータ解析技術の進展で新薬開発は効率化が急速に進み、市場が小さい希少疾患でも収益化が可能になりつつある。 希少疾患における日本の優位性は高いとされる。島国で数百年単位で見た場合の人の往来が限られ、希少疾患の原因となる遺伝子を遡りやすい。欧米に比べ難病指定された患者に手厚い制度があり、対象患者数が少なくても新薬の承認を受けやすい側面もある。 日本政府も希少疾患の患者救済に加え、世界で競争できる産業基盤の構築を狙い開発を後押しする。研究費の半分を交付する資金支援や税制優遇のほか、通常は1年程度かかる審査期間を半分に縮める新制度を導入した。環境変化を受け製薬各社は開発を強化する。 富士フイルムは希少疾患「ライソゾーム病」の治療研究を本格化する。体内で不要となった物質を分解する酵素に異常が起き肝臓や骨、中枢神経に重篤な症状が出る。酵素を人為的に補う対症療法が中心で成人になる前に死亡するケースが多い。富士フイルムは再生医療技術を応用。マウスでの実験で疾患の原因となる不要酵素の蓄積を減少させる効果を確認した。 武田は希少疾患の大手シャイアーを約7兆円で買収。取り込んだ技術をもとに血液難病の「血友病」や体の様々な場所が腫れる「遺伝性血管浮腫」など12種類の医薬品候補の開発を進める。クリストフ・ウェバー社長は「日本の製薬会社として、希少疾患で世界の先頭を走る」と明言。がんや中枢神経疾患などに続く新たな柱に育てる。 各社は日本で開発に成功した新薬を海外展開すれば、希少疾患の分野でも年間売上高が1千億円超の「ブロックバスター(大型新薬)」が育つと判断している。さらに開発した基礎技術がより患者数の多い難病に応用できる効果も期待する。 中堅製薬のJCRファーマは希少疾患治療で難題となる脳への薬物伝達で画期的な新技術の開発に成功した。パーキンソン病やアルツハイマー病など脳神経に関係する難病にも応用でき、世界の製薬大手が提携を持ちかけている。 個々の希少疾患の市場規模は小さいが、種類が多いため全体で見ると大きく膨らむ。英調査会社によると、世界の希少疾患の関連市場は2022年に2千億ドル(約22兆円)と15年から倍増する見通しで、成長率は年10%以上を見込む。現在、6千億ドル規模の希少疾患以外の製薬市場(4~5%)を上回る。生活習慣病や抗がん剤の領域では欧米勢に出遅れている日本勢が存在感を高める契機となる可能性がある。 希少疾患などの治療には薬剤費や処置など高額な治療費がかかる。日本ではほとんどが国の難病指定を受けており、患者負担は1カ月1万円程度ですむ。小児であれば実質無料になる。 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42846320U9A320C1MM8000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/japans-drugmakers-look-to-orphan-drugs-to-vie-with-western-rivals
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