日本経済新聞に、東芝社長の水素関連ビジネスについてのインタビューが掲載されました。トヨタ自動車がガソリンの代わりに水素で走る燃料電池車(FCV)「ミライ」を発売するなど、エネルギーインフラとして水素を活用する動きが相次いでいます。水素社会の実現の見通しやその姿について、水素関連ビジネスを進める東芝の田中久雄社長と、環境・エネルギー問題に詳しい安井至・東京大学名誉教授へのインタビュー記事を掲載します。
質問:水素に注目する理由は何ですか。 「電気を水素に変えて貯蔵したり運んだりすることができ、二酸化炭素(CO2)を排出しない。人類にとってのいわば夢のエネルギーと言える。地球温暖化問題を考えれば環境への負荷の小さいエネルギーを使っていかなければならない。エネルギーの安全保障上も、特に日本のような化石燃料の自給自足ができない国では水素利用は重要になってくる」 「水素関連の新しいビジネスが生まれることも期待している。今は助走段階で、東京オリンピック開催を経て20年代には相当な勢いで市場が広がるという実感を持っている。現在約7兆円とされる世界の水素関連の事業規模が30年には40兆円、50年には120兆円になるとの試算もある。東芝自身は20年度に水素関連ビジネスの事業規模を1千億円にする目標を掲げている」 質問:水素社会の実現に向けた課題は。 「3つある。水素の製造、貯蔵・輸送、発電の各段階でさらにエネルギー効率を上げること。水素や関連インフラのコストを下げること。そして規制の緩和だ。最初の2つについては産業界が努力をするが、水素の利用コストを下げるための補助制度など政府の果たす役割も重要だ」 「規制を適正化するためやるべきことも多い。東芝が開発した自立型水素エネルギー供給システムでは、水素ガスを約8気圧というかなり低い圧力で貯蔵している。10気圧以上の設備だと法令で管理者の常駐が義務付けられるためだ。もしトヨタの燃料電池車の水素タンクのように700気圧まで圧縮可能なら、同じタンクに約100倍の水素をためられる」 質問:水素社会の将来像をどうイメージしていますか。エネルギーの大半が水素に置き換わるのでしょうか。 「そうはならないだろう。火力発電や水力発電、原子力発電、大規模太陽光発電など様々なエネルギー源とならぶ一つになる。水素は火力や原子力のような大型集中電源には不向きで、比較的規模の小さい地域単位での利用に向いている。燃料の調達コストが高い離島での利用や、地域での分散電源に適しており、少なくとも最初はそこから始まるだろう」 質問:水素で大規模な発電をするのは現実的ではないということですか。 「水素は環境負荷の小さい手段で作ったものを使いたい。太陽光や風力など再生可能エネルギーから水素を作るのがよいが、日本はこうした方法で大量の水素を作るには適していない。大規模な水素発電用には、太陽光発電などの条件の良い海外で安く大量に作った水素を輸入して使うことは考えられる」 http://www.nikkei.com/article/DGKKZO86149590V20C15A4TY6000/
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