朝日新聞によれば、仮想現実(VR)の装置を使って、がんを患い緩和ケア病棟で過ごす人に、行きたい場所や場面を疑似体験してもらう試みが市立芦屋病院で始まりました。医学研究の形で慎重に進めていますが、体験者にはおおむね好評で、病院側はQOL(生活の質)の向上に役立つことを願っています。
この病院に入院中の女性(40)は昨年末にあった院内の演奏会の動画をVRで鑑賞しました。装置に付いたヘッドホンから聞こえる音楽は、フルート、ピアノ、パーカッションの奏者の動きにぴったり合います。「音もあると臨場感が違う。病院にいても、次何をしてみようかな、と楽しみになる」 VRは顔を向けた方向に合わせて3次元映像も動き、あたかもその場にいるような体験ができます。研究では、映像を映すゴーグル型の装置を頭部に固定し、リモコンで行きたい場所などを選んでもらいます。世界中の景色の中に入り込める米グーグル社の映像ソフトのほか、全方向を写す特殊なカメラを使えば自宅や思い出の地の映像も利用できます。 考案したのは同病院に勤める薬剤師の仁木(にき)一順(かずゆき)・大阪大助教。病棟内の情報共有の場で昨年、帰宅の願いがかなわない患者のために、自宅からカーテンや寝具を持ち込んで模様替えした事例を知ったことがきっかけでした。「VRを使えないか」。病院の倫理委員会から臨床研究として承認を受け、昨秋に始めました。 最初の体験者は登山好きの女性で、登りたかった山の頂からの景色を楽しみました。別の体験者も、桜の木を寄付しようとしている地元の九州の公園を見に行ったり、新婚時代に訪れた京都を再訪したりと、希望は様々です。 緩和ケア内科の松田良信部長は「ほとんどは満足されているようだ」と話しています。ただ、ゴーグル型の装置は500グラムほどあり、体力が落ちていると、首を動かすことも負担になります。疾患や薬などの影響でめまいや吐き気を起こしやすくなっていることも注意点です。今のところ体調が安定して、操作に慣れやすい比較的若い人に限られているのが現状です。演奏会を楽しんだ女性は「座っている姿勢がつらく、仰向けになると空や天井ばかり見ることになってしまう」と改善を望んでいます。 仁木さんはガラシア病院(大阪府箕面市)でも今月から共同研究を開始。計20人を目標に体験前後にアンケートして、体の状態や精神面の変化を調べます。「効果の評価はこれからだが患者さんのQOLの向上につながるのではないか」と、仁木さんは期待しています。 https://digital.asahi.com/articles/ASL2V6GG5L2VUBQU01H.html?iref=pc_ss_date この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/virtual-reality-takes-terminal-cancer-patients-to-dream-places-in-japan
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