本日付の朝日新聞のよれば、円高と世界景気の減速が2017年3月期の企業業績を脅かしているようです。逆風下でも最高益をうかがう数少ない企業の1社がTDKです。相次ぐM&A(合併・買収)で来期の連結営業利益は一時的に大きく膨らむ見通しで、見据える目標は来期ではなく、2020年度です。会社の形を変えるM&Aで、成熟化が進むスマートフォン(スマホ)の「次」に照準を合わせています。
「減速は織り込み済みだ」。上釜健宏社長にスマホ市場変調の影響をたずねると、こんな答えが返ってきました。米アップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)」減産で16年3月期の業績予想を下方修正する電子部品メーカーが目立つなか、TDKは前期比31%増となる650億円の純利益予想を据え置きました。中国や韓国メーカー向けに販売が伸び、2次電池などでもシェアを伸ばしています。 スマホ向けの生産調整は過去に何度も経験しています。集中リスクを避けるために上釜社長が唱えるのが「シェア3割理論」です。特定メーカーへの納入シェアが高くなれば、業績の振れ幅も大きくなります。より長い目でみれば、成熟化の進むスマホ市場そのものへの依存度を減らすことが課題となります。 実際、課題を解決するためのM&Aを毎月のように実行しています。昨年11月には磁気ヘッド関連部品の米ハッチンソンテクノロジーの買収を公表。12月には、クルマや産業機器向けセンサーのスイス・ミクロナスセミコンダクタホールディングスの買収を発表しました。 今年1月には米半導体大手クアルコムとの合弁会社設立を打ち出しました。TDKの高周波部品の一部事業を切り出してシンガポールに新会社を設立します。切り出す事業の規模は約1200億円と連結売上高(今期予想で1兆1800億円)の1割に相当します。「怒とうのM&Aだ。うちにはとてもまねできない」。ライバルの電子部品メーカー幹部は舌を巻きます。 新会社の出資比率はクアルコムが51%でTDKは49%。TDKが事業持ち分を売却する形となります。将来、TDKが持ち分を売却するかクアルコムが買い取る権利を行使すれば、売却総額は約3600億円になります。契約が予定通りに結ばれると、まず17年1~3月期に営業利益の押し上げが見込まれます。アナリストの推計によると、その額は1200億~1500億円。営業利益の過去最高は98年3月期の983億円ですから、来期は一時的な利益計上だけで、その水準を軽く上回ります。 TDKの主眼は、こうした会計上の利益ではないようです。「5年後には自己資本利益率(ROE)と営業利益率で15%を目指したい」。1月13日、上釜社長はクアルコムとの合弁会社設立に関する説明会でこう述べました。現在の中期経営計画で掲げる目標は、いずれも18年3月期に「10%以上」です。それだけ新会社を通じた中長期的な成長に期待を込めています。 「重点市場」と位置づけるのが、自動車、産業機械・エネルギー、情報通信技術(ICT)の3分野。センサーなどの部品単体だけでなく、複数部品を組み合わせた「モジュール」の強化も柱となります。クアルコムのライバル企業が距離を置く可能性もあるが、上釜社長は「業界では今後、色々なことが起きる。(合弁で)次世代の成長にかける」と決意をにじませています。 市場では成長を意識した一連のM&Aを評価する声が多い半面、株価は2014年9月以来の安値圏にあります。ハードディスク駆動装置(HDD)ヘッドの下振れに加え、他の電子部品銘柄と同じく「スマホ減速」への警戒感が残るためです。 新会社設立に伴う現金収入は設備増強や追加のM&Aに充てる方針です。TDKが見据える「次の会社のかたち」を実績で示せれば、株価反転のきっかけも見えてくるようです。 http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXMZO9768743025022016000000 この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: http://www.j-abc.com/blog/-aggressive-deals-taking-japanese-electronics-major-beyond-cash-cow-smartphones
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