本日付の日本経済新聞によれば、日銀内で追加緩和論が浮上してきたようです。原油価格の下落で2%の物価上昇目標の達成が難しくなっているうえ、円高・株安の加速で景気が下押しされるリスクがあるためです。ただ、日銀だけが動いても世界的な市場の動揺は鎮まらないとの意見もあります。市場動向をにらみながら、28日から2日間の日程で開く金融政策決定会合で慎重に議論するとのことです。
日銀の黒田東彦総裁は21日の参院決算委員会で、市場の混乱が景気や物価に与える影響について「引き続き十分注視していく」と話しました。物価2%目標の達成に必要なら「ちゅうちょなく政策調整をする」とも述べました。 菅義偉官房長官も21日午後の記者会見で「具体的な金融政策は日銀に委ねるべきだと考えている」としたうえで「日銀も(情勢を)しっかり注視しているのだろう」と語りました。アベノミクスの「成果」である株価上昇が危うくなるなか、政府・与党でも追加緩和期待が高まりつつあります。 日銀内で緩和論が浮上したきっかけは底値が見えない原油安です。「原油安による物価下落によって人々が『物価が上がりにくい』と感じ始めているなら、追加緩和を検討すべきだ」。日銀幹部はデフレ心理の払拭が遅れるリスクを指摘します。 日銀は29日公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で物価見通しを下方修正し、2016年度の物価上昇率を従来の1.4%から「0%台後半~1%程度」に下げます。「16年度後半ごろ」としていた物価2%目標の達成時期も先送りする可能性が高いとのことです。 当初日銀では、春ごろまでの物価情勢を見極めたうえで、追加緩和を慎重に判断すべきだとの意見が多かったようですが、年明け以降、金融市場が大きく動揺し実体経済に波及する懸念が強まってきました。 円相場は20日に一時、1年ぶりに1ドル=115円台まで上昇。15年度下期の想定為替レートを120円と置いたリコーやマツダだけでなく、115円としたトヨタ自動車にも収益悪化のリスクが忍び寄ります。脱デフレのカギとなる賃上げや設備投資に影響が及びかねず、日銀内で追加緩和の前倒し論が急浮上する展開となりました。 追加緩和の手段では、現在年80兆円の国債の購入枠を10兆~20兆円増やす案が有力です。年3兆円の上場投資信託(ETF)の購入枠を増やす案もあります。ただ、日銀の大量購入で債券市場に出回る国債が減っているため、新たな緩和手段を検討すべきだとの声もあります。銀行が日銀にお金を預けた際の金利(付利)の引き下げや、地方債などのこれまで買い入れていない資産の購入なども検討対象になる可能性があります。 もっとも、日銀の追加緩和によって円高・株安に歯止めがかかるかは見通しにくいとのことです。 相場の流れにいったんブレーキがかかっても、原油安や世界的な株安の連鎖が加速すれば、緩和の効果も剥落しかねません。日銀の緩和手段が限界に達したと市場が見透かせば、逆に円高・株安が加速するリスクもあります。日銀は市場の動向をぎりぎりまで見極める構えのようです。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF21H0M_R20C16A1EA2000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください。: http://www.j-abc.com/blog/-bank-of-japan-mulls-additional-easing-amid-economic-uncertainty
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