日本経済新聞社によれば、製鉄原料の価格が上昇に転じているようです。高炉の主原料である鉄鉱石は1トン70米ドルに迫り、1カ月で2割上がりました。中国の鋼材価格上昇を受け、同国の製鉄会社が増産のために原料購入を増やしました。原料炭や鉄スクラップの価格も上昇基調です。国内で鋼材の値上げに時間がかかるなか、鉄鋼メーカーの収益を圧迫する要因となりそうです。
アジアで鉄鉱石の価格指標となるオーストラリア産のスポット(随時契約)価格は1トン67米ドル前後で、2カ月半ぶりの高値水準です。原料炭も豪州産のスポット価格が1カ月前に比べ15%高い1トン160米ドルで推移しています。 価格を押し上げているのは中国の旺盛な需要です。6月の鉄鉱石輸入量は1日当たり約315万トンを超え、過去最高となりました。中国政府は6月まで粗悪な鋼材の生産停止を推し進めていたため、建築用の形鋼や鋼板で特に品薄感が強いようです。 政府による景気刺激策の効果もあり、マンションをはじめ不動産開発の動きは活発です。中国国内の鋼材価格が上がり続けるなか「環境基準を満たす現地の高炉や電炉が増産に走っている」(大手商社)ということです。 中国による鋼材増産の余波は、電炉の主原料である鉄スクラップにも及んでいます。日本の電炉の買値は1トン2万8千円前後と、5月に比べて2割近く高くなっており、中国産のスクラップや粗鋼半製品の供給が大幅に減っています。東南アジアの電炉は中国からの調達を諦め、割安となった日本のスクラップに目を向けています。 東京製鉄の今村清志常務は「海外の鋼材高や原料高は、日本の鋼材市況にとって違和感がある」と語ります。高炉や電炉は昨年までの原料や燃料価格の上昇を製品に転嫁したいと考えています。しかし、国内は鋼材の動きが鈍く、値上げを受け入れる機運に乏しいようです。原料高を転嫁できなければ、鉄鋼メーカーの採算は悪化してしまいます。 もっとも原料価格が一本調子に上昇するとの見方も限られています。鉄鉱石は新規鉱山の生産開始で長期的に供給過剰が続いています。中国は鋼材高を見越したトレーダーの思惑による買いが多く、港湾在庫は過去最高水準です。 中国政府は金融引き締めに動き、鉄鋼メーカー向けの融資も絞られつつあります。米金融シティグループは「高炉は現金で鉄鉱石を購入せざるを得なくなり、在庫を積み増す動きは止まるだろう」とみています。シティグループの予測によると、鉄鉱石は短期的に40米ドル台まで下がるということです。 国内の電炉各社は7月に夏季減産を計画しています。スクラップの国内需要は低調です。「スクラップ価格も8月中旬以降に下げに転じる可能性が高い」(電炉の調達担当者)との指摘があります。 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO18977170Y7A710C1QM8000/ この記事を英語で読みたい方は、こちらをご参照ください: https://www.j-abc.com/blog/steelmaking-material-prices-rise-with-chinese-demand
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